グラングリーン大阪 うめきた公園大屋根施設 「ロートハートスクエアうめきた」/SANAA
JR大阪駅北側に広がる旧梅田北ヤード跡地の再開発事業「グラングリーン大阪」。
4,000m2の芝生広場と水盤を有する「うめきた公園・サウスパーク」のイベントスペースを妹島和世氏と西沢立衛氏の建築ユニット"SANAA"が手掛けた。
建物は高さ13メートルを超える大屋根のイベントスペース棟「ロートハートスクエアうめきた」と情報発信棟「PLAT UMEKITA GALLERY」、そして空中で南北の公園をつなぐ歩行者デッキ"ひらめきの道"をくぐった北側に配置された「レストラン・カフェ棟」からなる。
建物最大の空間であるイベントスペースの大屋根は、三角形のグリッドシェル構造を採用し柱のない空間を実現。建物端の南面は全体が地面に接し、北側は2つの点で支えられている。
大屋根はイベント時以外はステージが取り払われ公園へのゲートのような役割を果たすとともに、心地よい風が通り抜ける憩いの場となる。
建物の中央部と北側のレストラン棟は傍を通るペデストリアンデッキをくぐるように配置されている。
2012年、一時は国立競技場のコンペを勝ち取ったザハ・ハディドの案は、敷地のすぐ北側を走る首都高とJRの線路を跨ぐようなデザインで(すぐに修正されてしまったが)、分断された街を再統合する意図が感じられた。
うめきた公園の計画はペデストリアンデッキも大屋根も新設のものではあるが、道路によって南北に別れた敷地を結ぶ立体的なデッキと、さらに立体交差するゆるやかな曲線を描くこの建築が有機的に構成されている。
碁盤の目のように整備された大阪中央部とは異なり、かつて線路が通った末広がりに近いこの地に、入り組んだ街中の敷地に建つ家のように道に合わせた形状を取ることで、それぞれの構造物が無計画な条件をうまく利用したかのような状況を作り出し、土地に溶け込ませている。
うめきた公園サウスパークにおいて主役となるのは水盤を有した芝生広場と周囲の樹木である。
建物は最大で3メートルの高低差がある公園に合わせ、高さを抑えつつ水平的な広がりを持ち自然のような起伏を形成。
植樹されたばかりの若い木々が等間隔に並んでいてまだまだ人工的な空間だが、10年後、20年後に自然と呼べるものになったとき、周囲のビル群と公園を有機的に繋ぐこの建築がこの地にどれだけ溶け込んでいるのか、楽しみに待ちたい。
作成者: Hiromitsu Morimoto