
EXPO2025 大屋根リング/藤本壮介
大阪・関西万博のシンボルとなる巨大な木造建築「大屋根リング」。多様な文化を持つ世界各国のパビリオンを内包する。
設計・監修は建築家・藤本壮介氏。
建物は柱にほぞ穴を開け貫材を差し込み、楔(くさび)で固定する「貫接合」と現代の工法を組み合わせて施工された。
大林・清水・竹中がそれぞれ担当した工区により独自の納まりを採用している。


リングは高さ20メートルの展望歩廊「スカイウォーク」と来場者のメイン動線となるリング下の「グランドウォーク」からなる。リングはゲートの役割も果たし、リングをくぐり足を進め徐々に視界が開けると、海外パビリオンが所狭しと並ぶメインエリアへと誘われる動線は心が踊る。


スカイウォークは高さ約20メートルの外側と、高さ約12メートルの内側の二層に分かれ、それぞれが起伏のある丘のようにスロープでつながり、全長は約2025メートルに及ぶ。(2025年にちなんだのだろうか)
通路以外の部分は緑化され、「天の川」と名付けられた白い膜部分からリング下に光を届ける。


リング下のグランドウォークは来場者のメイン動線となり、目的地まで雨や日差しを避けながら移動することができる。ベンチや自販機も備えられており、一時の休息の場としても利用されている。
「ウォータープラザ」と「つながりの海」に挟まれた箇所は外周バス「e Mover」が走り、広大な会場内の有効な移動手段となっている。



リングからパビリオンが建ち並ぶ内側を見下ろすと、各国の文化や伝統が凝縮された様々な形状・素材・装飾の施された独創的なデザインを俯瞰的な視点で楽しむことが出来る。

最上部には芝生の敷かれたエリアがあり、ゴロゴロと寝転がりながら空を眺めたり、会場の喧騒を遠巻きに感じることが出来る。
芝生エリアは混雑した会場の雰囲気とは一線を画しており、万博に来ていることを忘れてしまいそうになる。気候の良い時期はピクニックにでも来たかのような気分になれるとても居心地の良い空間。


リング南側は内側のウォータープラザと外側のつながりの海で囲い込み、海にせり出すように配置されている。広大な水辺ではウォーターショーやドローンショー、花火など夜の水辺を彩る様々なイベントが開催され、リングも演出に呼応する舞台装置として効果的に利用される。







殺風景な未活用の埋立地を会場にするにあたり、単純にゲートと仕切りで区切られた空間を作っても分断された閉鎖的な万博会場となっていただろう。
大屋根リングこそ閉鎖的な巨大建造物のようであるが、なにもない広大な敷地にリングを置き、一定の秩序を生み出すことでリングを中心に内と外に包括的な空間を形成し、広い空と海をも会場の一部として取り込んだように感じられる建築だった。
これほど大きな建築物を目にしたのは初めてのことでリングを一周するだけでも一苦労だが、万博という世界的なイベントを肌で感じるだけではなく、西に瀬戸内海を有し海に沈む美しい夕日を見ることのできる大阪の魅力を再認識できたことも、この建築あってこその体験だった。

作成者: Hiromitsu Morimoto